あやめ



「巧」


巧は今でも夢を見る。


悲しい瞳で、笑う莉子。


「タクミ!」


「莉子…?」


目を開けた先に見たのは、


(莉子じゃない…)


莉子よりも強気な目をした、


「あやめ…?」


彼女だった。


「来たら、うなされてたから。起こしてやっただけ」


あやめはそう言って、走り去った。


巧は、いつもの木の下にいた。


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