恋愛倶楽部 -love-



申し訳なさそうに続けられ、別にいいよと返事。

布団からは出ずに、上半身だけを起こした牡丹。


話さないわけには、いかないか。

何か隠しておかなきゃいけない秘密が、あるわけでもないんだから。



「偶然、凪兎に会ったの。
それで一緒に話してたら寿羅に会って」

「凪兎さんというと?」

「前に助けてくれた人」


それ以上、どう説明すればいいかわからない。


確か、牡丹が愛美ちゃんに誘拐された時だったよね。

初めて会ったのは。


考えれば考えるほど、謎が深まるばかり。

本当に不思議な人。



「あ、あと………」



言うべきか、言わざるべきか。

しばらく逡巡。

言おうと決心したところで、大きく息を吐いた。



「亜蓮に会った」

告げると牡丹はかすかに口元を動かす。

たぶん、びっくりしたんだと思う。


突然出てきた名前が、よりによってあいつだし。

会いに行く前に、会っちゃったし。


世の中そんなに広くない。

だから、ばったり出会っちゃうことは変なことじゃないんだ。


もし相手が元カレで、しかも敵であったとしても。

あたしが一生懸命、避けていたとしても。


全部、無意味。



もし神様がいるのなら、相当意地悪かもしれない。






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