恋愛倶楽部 -love-



よりによって、組み合わせが風音と黎緒先輩とはな。


「ゆゆと喋ってるから、邪魔しないで」

再びぎゅっと抱きついてくる風音。


こっちを見てる黎緒先輩の笑顔が、怖く見えるのはあたしだけ?


「頼まれてる伴奏があるから、少し遅れて行くね。
箕笙くんは、用事ないの?」

「ないよ、だからゆゆと一緒に部室で───」

「そっか、なら良かった。
ちょうど人手不足だったから、手伝ってくれる?」


風音の声を途中で遮ると、黎緒先輩はあたしから風音を引き離す。

それに抵抗するように、バタバタ暴れて。


「何するの!
ボクはゆゆとソファーでお昼寝するのに」

そんな予定、聞いてないけど。


「……ウザいんだよ、黙ってついて来い」

完璧に裏の顔になった黎緒先輩に、空気が凍りついた。



ついに風音にまで被害が。

あたしだけじゃなくて、他の人の前でも毒を吐くようになったらしい。


とは言っても、自分が不都合になる相手にだけなんだと思う。

牡丹に冷たくあたってるとこなんて、見たことないもんな。



「ゆゆぅー」

あたしへ手を伸ばして泣きそうになりながら、どんどん遠ざかる。

風音を引きずっていく黎緒先輩は、笑顔で振り返って。


「箕笙くんのコレは嘘泣きだから、気にしなくていいよ」

いや、今回のは本気泣きだと思いますよ。






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