Dear...

過去

未来が明日香と共にカコの元を離れてすぐに、前の席に座る生徒とその周りがカコの元に集まった。
「今野さんって、古井と仲いいんだね」
その中で話しかけて来たのは、前の席に座る五十嵐希。

未来が居なくなった、というそれだけで体が強張るのが分かる。
そのまま何も言えずにいると、希がカコの机を叩いた。
大きな音に、周囲の目が集まる。
「黙ってちゃ分かんないでしょ」
さっきとは全く違う、低い声。


――――――――――――――――――――――、

『黙ってちゃ分かんないでしょ!』

いつの日か、誰かがわたしに言った。
涙しか出なくて、ただ『はい』と言うだけ。
『聞こえないよ』
わたしの目の前に居る、女の子たち。
その中には友達だった子も居た。

『あんたってうざいんだよ』
周りが集まってくる。
だけど、誰も助けない。
助けようとしない。

『もう、学校来ないで』
涙が零れた瞬間、何かが崩れた。

『目ざわりだから』

――――――――――――――――――――――、

「・・・聞いてんの?」
その声に、俯いていた顔を上げる。
すると、希は笑った。
「なんか挙動不審っていうかさ」
「正直、浮いてるよね」
黙ってその言葉を聞いているカコ。

「未来も未来だよ、こんな子と仲良くするんなんてさ」
周りの人たちも話し始める。
「・・・やめてください」
「はぁ?」
と言って、カコを笑う。
「未来ちゃんの悪口はやめてください」
声が震えてしまう。
「偽善っぽーい」
「っていうかあんた知らないの?」
希がカコの顔を見る。
強い目線。だけどカコもその目を離さない。

「あいつって超問題児じゃん」
「中学の頃すごかったんでしょー?ねーマキ」
うん、と頷く人。
「少ーし可愛くて、少し他の学校の男子にモテるからって調子のってんだよ」
笑いながら話す希に、カコは言った。

「それって、嫉妬ですよね」

「・・・何?」
「・・・そういうのって、嫉妬っていうんですよ」
下を俯いて言うカコに、希の顔はひどく険しくなった。

「もう一回言って」
「え?」
「もう一回言ってみろって言ってんの!」

その瞬間、立ち上がった希はカコの体を突き飛ばした。





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