終学旅行
 目が覚めた瞬間、八木潤は自分がまるで金縛りにでもあったかのように動けなかった。ゆっくりと視界をめぐらし、それがホテルの天井であることを確認すると、ようやく呪縛から解けたかのように身体をベッドから引きはがした。

「大丈夫?」
ドアから母親が心配そうに顔をのぞかせている。そういえば、昨夜北海道から駆けつけてくれたんだった。

「うん・・・」
そう言いながらベッド脇にある眼鏡をとった。

「ほら・・・悲鳴が聞こえたから」

「うん・・・」
そうか、悲鳴をあげていたのか・・・。八木潤は、大きく息をつくと、
「大丈夫だよ」
と微笑んでみせた。無理やり作った笑いだったが、母親は安心したようにドアを閉めた。


___あれから2日たったのか・・・

 窓の外には大きな青空が広がっていた。低い雲が冬の訪れを示唆しているような、そんな天気だった。窓辺に立つと、はるか下の道路にはテレビ局のバンが数台止まっているようだった。すぐに顔をひっこめると、潤は再びベッドに腰をおろした。



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