終学旅行
 全員が降りた後に、鳥岡と山本も降りてきた。

「トイレ行って来るわ。腹いたくてな」
 従業員は車内のトイレの使用は禁止されているのだ。
 小走りでかけて行く山本を見送ると、隣に立つ鳥岡が、
「お騒がせしてすみませんね」
と声をかけてきた。

「いえ、思ってたより全然静かで良い生徒さんたちですね」
正直に言った。実際、彼らは先輩たちに聞いていた『魔の修学旅行生』からは程遠かったからだ。

 鳥岡は、フッと笑うと、
「日々戦いですよ。教師になった頃は私もおとなしかったんですけどね。彼らを相手にしてるとどんどん男みたくなっちゃって。・・・驚いたでしょう?」
と、佳織を見た。

「・・・そうですね」
何て言ったらよいのか分からずに、佳織はあいまいにうなずいた。

「校長先生なんて、はじめは『鳥岡さん』って呼んでくれてたのに、今じゃ『鳥岡君』だもの」

 その言葉に思わず佳織は吹き出した。

 鳥岡はわざとらしく肩をすくめてみせると、トイレの方へ歩いていった。




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