終学旅行
「誰がトイレに行っていいって言った?」
すぐさま女が現れたのを横目で見ながらも、佳織は吐くのを抑えられなかった。

 そんな佳織をまっすぐに見ながらも、女は、
「ま、仕方ないわね。ただし余計なことをしないこと。おとなしくしていればあなたは殺さないわ。きれいにしたらすぐに戻りなさい」
と言うと、その場を離れた。

 ある程度吐き気がおさまると、水で口をゆすいだ。

 ショック状態なのか、未だになにが起こっているのかを思考回路が追いつかない。ぼんやりと鏡にうつる自分を眺めた。

 汗と涙で、化粧もボロボロになっていた。

 その時、佳織はあることに気づいた。

「そうだ・・・携帯・・・」

 女はまだ佳織の携帯電話を回収していなかったのだ。プライベートの方は会社に置いてきたが、会社用の携帯はマイクの操作パネルに無造作に置いてあるはずだ。


 もう一度水で口をゆすぐと、佳織はトイレを後にした。







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