晒し神

真治

真治はおかしくなりそうだった。

ある時を境に、昼夜を問わず自宅の電話や、両親、自分の携帯の着信が鳴り響いた。

その内容全てが、知らない第三者からの「子猫殺し」への罵声。

塀の落書きから約10日、ネットの掲示板へは書き込みはしていなかった。
というか、自宅のパソコンに電源すらいれていない。

ただ一度だけ、あの自宅を特定する書き込みがなされたすぐ後、ふと真治は「他人を装い、自分を擁護しよう」と考えた。

自宅から程遠い、利用したことの無いネットカフェ数件に行き、他人になりすまして、自分の自宅を特定した行為を「ひどいイタズラ」として、さも第三者の顔で擁護した。

「見ていて思うのですが、この住所を書かれた人が、本当に犯人なのか判らないのに、こんな事を書いてよいのでしょうか?」

「警察にこの晒し神というヤツを訴えよう」

三軒目のネットカフェから
「晒し神というのは常識の無い異常者」
と書き込んだ後、リロードした画面に、真治は目を見開いた。
時間にして一分も立っていないだろう。

「猫殺し 鈴木真治 34歳 無職 090-6××4-14×× 0×2-3××-91××」晒し神

手が震え、嫌な感じの汗が全身を流れる感触

とっさにいすから立ち上がって「そんなバカな!」と声に出していた。

「何故知ってるんだよ!?携帯とか」唇が震える真治。

そのすぐ後に、ポケットの携帯がなる音に「ヒッ!」と声を上げた。



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