晒し神

Mrモチズキ

「ドシャッ」

何か鈍い大きな音に、通行中のOLが音の方向を見た。
「ヒッ!キャァ~!」
目線の数メートル先に、オレンジ色や赤い液体を撒き散らした、黒い塊が落ちていた。

「昨日、教務課の青木先生が自殺したらしいよ」

友人の情報に雄太は驚いた。と同時くらいに「聞いた~?」と歩美が走ってきた。

青木先生は亡くなる一週間ほど前から、キャンパス内の「時の人」になっていた。

晒し神の警告の後も、相変わらず非人道的な書き込みを続けていた「Mrモチヅキ」

ある書き込みの後にそれは来た。

「心無人 青木孝之 31歳 △□福祉大学 教務課 080-××11-×3××」晒し神

この書き込みの情報は、生徒はもちろん、教員内に瞬く間に広がった。
「青木君らしいけど、どうなのかね?聞いてみてくれよ」「嫌ですよ!」教務課内でのヒソヒソ話や、廊下ですれ違うたびに見せる、生徒や教員達の「笑ったような目」

「青木先生!アノ書き込みって本当ですかぁ?!」
興味津々な生徒たち数人が、帰り際の青木に露骨に聞いてきた。

青木は独身、体格は「小ぶりの相撲取り」で、若干の吃音があるためか無口であった。

「し、し、知らないです、こ、こ、困ってるんです」
額の汗をハンカチで拭きながら、青木は足早に自宅へと帰っていった。
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