水島くん、好きな人はいますか。




4月も下旬に差し掛かり、徐々に新生活にも慣れてきた。


下校時刻が迫る18時半前、急いで正門へ向かう。


「りっちゃん! ごめん、お待たせっ」

「おー。お疲れ。今日は大学のほうでやってたのか」


写真部のりっちゃんとは家が近いので、時間が合えば一緒に帰っている。活動日ではなかったシーズンスポーツ部の瞬とみくるちゃんはとっくに帰宅しただろう。


「最近どうよ」


正門近くのバス停から乗り込み2人席に座ると、りっちゃんがいつものように訊いてくる。


「どうだろう。この前とあんまり変わってないかな」

「黒王子が怖くて、幼なじみくんが不機嫌ってこと?」

「うん。……黒王子って島崎くんのことだよね?」

「そう。ゴシップ王子に改名しようかと思ってるけど」

「ゴシップって、なんでまた」

「それがさ、すごいんだよー。同級生から上級生おかまいなしに女の子とっかえひっかえで。むしろハーレム? 浮いた話がわんさかっ」


さすがりっちゃん。楽しくて仕方がないのが見て取れる。


「あの外見だし、冷たいのも逆にいい!とか騒がれてるし。まあわかんなくもないね! それに帰国子女枠で入ってきたからねえ」

「えっ。そうなの? 知らなかった」

「万代は疎すぎるんだよ。だから王子って付けてたのに」


だって黒い人とは関わりたくないんだもの……。
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