水島くん、好きな人はいますか。


「やっぱりマヨマヨに頼んで正解だった」


土曜日の夕方、買い物を終え、カフェで休憩をとるなりハカセが言った。


「別の子に頼んでたら、なんでもいいじゃんって言われただろうしね」


今日はハカセに付き添い、みくるちゃんへの誕生日プレゼントを買いに来ていた。わたしはりっちゃんと一緒に購入済みだったから、かぶらないようにしたつもり。


女の子の“かわいい”のためにあるようなコスメティックブランドで、ハカセはコンパクトミラーとルームフレグランスが入ったポーチを選んだ。


「きっと喜びますよ。前に欲しいって言ってましたから」

「でも渡すまでは緊張するな」


そっか……。わたしはハカセに誘われるがまま今日こんな風になっているけど、ふたりは連絡もとってないんだよね。


そんな折、みくるちゃんの誕生日が近づいてきたわけで……ハカセはプレゼントを渡そうとしているわけで。


「ハカセは、なんというか、こう……」

「狡猾?」

「えっ!? いえあの、そうじゃなくて……、えと、」


ずる賢いとか、卑怯とか、そう言いたいわけじゃなくて。


「ぬ、ぬかりない?と、いうか」


時機を見計らうのがうまいなあって思う。みくるちゃんと話すきっかけとしては、充分だと思うし……。
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