君と僕のエスパシオ
それからは目が回るほどの忙しさだった。
フェニアス教授に会いに行くついでに、提出期限がギリギリだというレポートを出したいとエドガーは言ったのだが、肝心のレポートがなかなか見つからず、結局エミリアが掃除がてら探すこと30分後、ソファの下から大分よれよれになった姿で発掘された。
見違えるほど整頓された部屋を後にし、エミリアによって整えられた髪を風に晒しながら歩く事15分、大学に着いたときにはもう既に日が落ちかけていた。
「フェニアス教授」
ドアを正確に2回叩き、部屋に入ると眼鏡を掛けた白髪の老人が顔を上げた。
「おお、エヴァンズか」
エドガーの後ろに立つエミリアを視界の隅でとらえ、申し訳なさそうに口を開いた。
「まあ、その、なんだ……とりあえず入りたまえ、そこでは落ち着いて話しもできんだろう」
「はい、失礼します。」
教授の部屋も、エドガーといい勝負で散らかっていた。
今にも崩れそうな本のタワーの上では、薄汚れた天体望遠鏡の様なものがゆらゆら揺れている。
「それではエミリアさん、僕の力が必要な理由を教えて頂けますか?」
「あ、はい」
エミリアは部屋の中を見回し、少しぼーっとしていたので、急に話しを振られて慌てた様子で教授とエドガーに向き直った。
「私がエドガーさんの力をお借りしたいといったのは、もちろん過去の時間に行きたいからです。先日、私の友達のサラが突然姿を消してしまいました。お二人も新聞で御覧になったと思いますが…この所、不可解な誘拐事件が多発しています。子供から老人まで無差別に消えていなくなるという事件です」
「ああ、それなら僕も新聞で読みました。…因みに言ってしまえば、捜索の協力を頼まれていましてね」
「はい、それも承知のうえです」