地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
ことの始まりは、先週の水曜日ーーー。

大学が終わってから、あたしはバイトに向かった。


陸はもちろん、夕方から会社で仕事。

その前の週に、3日も連休を取ったから、それからは休みなしで。

あたしも会うのは、大学内でしかなかった。


夕方から、深夜近くまでの仕事。

あたしのバイトが終わってからでも、陸は疲れてて会うことなんてできない。

寂しさは拭えないけど、仕方ないことでと思ってた。

だって、社長さんなんだもん。しょうがないよね?


そう考えて、その日もバイトに励んでいたんだけど。


「杏ちゃん!彼が来たわよ!」


バイト仲間の万里さんから、仕事の途中にそう声をかけられた。

彼女は、相変わらずイケメン彼氏をゲットすべく、毎日バイトに来ている。


初めて陸に会った時、万里さんは相当衝撃というか、感動をしたようで……。

「こんなイケメンっているのね!」って、言っていた。


だから、陸が来店したことでテンションは急上昇し、彼女であるあたしに真っ先に教えてくれたんだよね。


注文を取りに行くと、来ていたのは陸だけじゃなかった。


「久しぶりだね、神崎さん」

穏やかに口角を上げて、微笑んでいる相澤くんもいた。

どうやら、ふたりで来ていたようで、陸は会社からの仕事帰り、相澤くんは大学からの帰り道で、待ち合わせをして来たようだった。


「今日は早いんだね?」

「あぁ……まだ残ってるけど、もう退社して来た。どーせ、そこまで急ぐ必要のないものだったしな」

あたしが尋ねると、多少疲れたようにそう言って、シャツのネクタイを緩める陸。

色気ムンムンです。


「お疲れさま」

ノックアウトされそうになりながら、ねぎらいの言葉を贈った。


注文を取って、個室から出ようとした瞬間ーーー……。


「杏、来週でバイトがない日はいつだ?」


そう聞かれた。
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