地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
ーー杏樹sideーー

梅雨の時期には珍しく、快晴ってくらいに晴れた土曜日の朝。

大学も休みで、バイトも入ってない。

久しぶりに、ゆっくりできるなぁ~……なんて、考えていた。


「えっと、洗濯して~部屋の掃除して~……」

天気がいいから、やりたいことがいっぱいある。

それに、今日はめずらしく、家族全員が家にいるんだよ。

じいちゃんも、お父さんも!

家業である妖怪退治の依頼もないみたい。

久々に、神崎家は穏やかな休日を過ごせそうです!


そう思っていたのに、家のインターンホンひとつで、それはガラリと変わることになった。


ーーピンポーン……

1階から、誰かが来たことを知らせる音が聞こえる。

こんな朝早くから、誰だろう?

時刻は、午前8時過ぎ。

あたしは自分の部屋にいた。

まぁ……じいちゃんの知り合いとかかな?

老人会のお友達とか?


そう考えていたのだけど、

「杏?入るぞ?」

突然、聞きなれた声がして、驚く。


「どうぞ」なんていう間もなく、ヤツはガチャリと部屋の扉を開けた。


「陸!?どうしたの?」

現れたのは、私服姿のあたしの彼氏様で。

細身のジーンズに、シンプルなTシャツ。

腰に、チェックシャツを巻いていて……胸元には、いつもの羽根のネックレス。

カジュアルなのに、チャラそうに見えないのは、陸の持つ品の良さがにじみ出ているからかな?

シンプルな格好でも、雑誌のモデルのようにカッコよく見えるのは、けしてあたしだけではないと思われます。

元が極上だから、何を着ても決まるんだろうか?

やっぱり、こうして見ると、改めてカッコイイなと思う。

伝えたら調子に乗るから、口には出さないけど!


つらつらと目の前にいる陸を見つめながら考えていたら、

「これに着替えろ」

と言って、ひとつの紙袋を差し出された。



< 297 / 622 >

この作品をシェア

pagetop