地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
――ガンッ!


ヤツの傍の壁を思いっきり蹴る。


「は?」


俺の怒った理由がわからないのか、間抜けな顔をする雷。


――グイッ


ヤツの胸ぐらを掴んで、壁に押し付けた。


「ちょっ……ちょっと!」


俺の行動に慌てた旭が、駆け寄ってきたが睨んで止める。


「お前、調子乗んじゃねーぞ」


自分でもここまで低い声が出るのかと不思議なくらいだった。


「な、何すんだよ!? 俺を誰だと思って!」

「あ?」


ヤツの真上から睨みつける。


身長差で、雷が俺を見上げる状態。

睨みが怖かったのか、ヤツの勢いがなくなった。


これは、ヤツの人気も価値も関係ない。

人としての問題だ。



「お前、なんて言った?」

「へっ……いや」

「ケガすれば、杏が治してくれるだと?」

「だって、それが得意なモノなんだろ!?」


雷の表情は、杏の能力は自分のために使って当然だというような感じだった。


「……さっき、杏が寝てるとか言ったな?」

「あぁ、それがなんだよ! その通りじゃねえか!」


車に寝ている杏を見たヤツは、声を張り上げる。



「寝てんじゃねーよ。コイツはな、意識不明の重体だ!」


「「「「「え……」」」」」


「お前らのケガに力を使い過ぎて、その代償が今だ。最悪、1ヵ月寝たきりってこともあんだぞ」


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