地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
そして、夜になり……杏のじいちゃんたちが病室へやってくる。


俺たちの状態を見て、額にシワを寄せた。


いや、俺に敵意を向けられても……杏からこうして来たんだし。

俺悪くねーよな?



膝の上から動くことのない杏。



抱っこされたまま、スヤスヤと、それはそれは……気持ちよさそうに寝てる。

その様子を見て、じいちゃんや親父さんは何も言わなかった。

せっかく目を覚ましたから、杏の好きにさせようと思ったんだろう。


「あらあら、陸くんだから安心しちゃって」


お袋さんが、杏を見てケラケラと笑う。




すると。

腕の中の杏が、もぞもぞと動き出し、目を開けた。


「ん……お父さん? じいちゃん?」


目をこすりながら、パチパチと瞬きを繰り返し、ふたりの名前を呼ぶ。


「「杏樹!」」


名前を呼ばれたじいちゃんたちは、コイツの顔を覗きこんで来た。


ちびちびとだが、水を飲んで寝たからか……顔の赤みは減っている気がする。

体がもっていた熱も、少しだけ引いたようだった。



「体は平気なのか?」

「うん」


親父さんの質問に、コクリと頷く。


「心配したんじゃぞ」

「うん、ごめんなさい」


じいちゃんの言葉に、軽く頭を下げて見せた。


杏の元気そうな様子を見て、ふたりは安堵の息を吐く。






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