地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
バタバタと忙しい日々。


「杏樹ちゃん、できたよ!」

「はいっ!」


出来上がったばかりのアツアツ料理をお盆に乗せ、両手で持つと、お客さんの元へと運ぶ。


はい、ただ今バイト中です。


今日は、火曜日で、大学の講義がないから、夕方まではゆっくりしていたんだけど……もうこの忙しさ。


あたしは、先週1週間、京都に行くためにシフトを開けてもらっていたから、今週は頑張らないとね。


今は夏だし、ビールを飲みにくるオジサンたちが多いんです。

あ、OLさんとかもいるけどね。




陸も、今日は講義がない日だから……1日中、会社でお仕事。


先週の金曜に、あたしの家に来て以来、なかなか忙しくて会うこともない。

大学の講義中は、ヤツの隣に座っているんだけど。

それだけじゃ、あんまり話も出来ないし……。

正直、あの日だけじゃ陸が足りない。

でも仕方ないよね、次の休みの日まで我慢しなきゃ。


その時に、いっぱい話して、抱きしめてもらおうっと!


それに、ただ会いたいってのもあるけど、ちょっと心配なんだ。


陸の体のこと。

金曜日に、頭痛のこと訴えてたよね。

あれ大丈夫かなって……。

ムリしないでほしいなぁ。


そんなことを考えながら、仕事をしているであろう陸を思っていた。


「杏ちゃん、これ持って行って!」

「はい」


万里さんから頼まれ、ビールのジョッキを両手に持ち、奥の個室へ向かう。


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