地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
誰かな?

ジッと、中に入って来る人を見つけていたら。


――ガラッ


「杏?」


やってきたのは、陸で……自然と頬が緩んだ。


読もうとしていた文庫本を閉じ、『抱っこ!』という意味を込めて、両手を広げる。


「はいはい……そんなに急かさなくても」


苦笑気味の優しい閻魔大王は、あたしのいるベッドまで歩み寄ってきて。


――ヒョイッ!


抱っこされた。


腋に手を差し込まれて、小さい子を抱っこするような感じ。


「お前、ちゃんとメシ食ってんのか? 軽すぎんぞ」


陸の言葉に、コクコクと大げさにうなづいてみせる。



ちゃんと、食べてるもん!

結構、ここの病院食おいしいんだからね?



陸の首に腕をまわし、ギュッとしがみつく。


忙しい陸は、毎日来てくれるけど……少しの時間しか入れない。




今も、スーツの背広を脱いで、少しネクタイを緩めただけの格好。


現在、大学が夏休みなので、バリバリ仕事しているんだよね。


だから、少しでも惜しいから……めーいっぱい甘えるのです!

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