隻眼金魚～きみがくれた祈りのキス～
　蓮があたしの近くにいるのは、目の怪我の罪滅ぼしだ。別に恋人同士だとか、責任取って将来を約束したとか、そんなんじゃない。

　ただ、蓮はそばに居るだけ。困った時に助けてくれるだけ。それに対してあたしは何も言ったことは無かった。
　罪滅ぼし。そんな理由クソ食らえだ。

　腫れ物に触るようにあたしを扱い、なんでも言うことを聞いている。でも、良い気味だとか、蓮の責任だとか思ったことはない。片目になって、目蓋に傷ができてしまったことで、恨んでもいないし憎んでもいない。

　当たり前になっていたからだ、蓮が隣に居ることが。
　蓮は親から何か言われてるんだろうと思う。詩絵里ちゃんの役に立ってあげなさい的な。

　そんなあたしも、なんとなく彼氏ができたりするわけで。
　自分のことを好きだって言ってくれる存在は一度味わったら、幸せだし、居ないと寂しい。
　寂しいけど、蓮から離れなければと思う部分も、少しあったからだった。

　でも、あたしが片目だって分かると、男は面倒くさくなるんだろう、離れていってしまう。

　怪我でこうなったんだから、例えば子供を産んだって遺伝するわけじゃないし、感染するわけじゃないし。

　この根性無しどもめ。傷付かないと言ったら嘘になる。嘘になるって言うか、かなり傷付く。傷付かないわけが無い。
　人間って差別する生き物なんだなぁ、と改めて思う。

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