バケバケ




音を響かせた。


箱の中に向かって。






香澄は相変わらず泣いていた。


「香澄…」


「……。」


箱の中から返事はない。






また音を響かせた。


香澄の大好きな音。






香澄。


なんで泣いてるんだ。


お前、俺の出す音が好きだって言ってたじゃん。


いつも笑ってこの音を聴いてたじゃん。


どうして…


俺は間違ってるのか?




いや、あの女を信じよう。

トキは確かにこの箱が俺と香澄を幸せにするって言ったんだ。


これが…


人間の香澄が死という恐怖から救われ、俺とずっと一緒に居られる唯一の方法。





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