バケバケ





「他に聞きたいことは?」


トキが私に訊いた。


「ないよ…もう十分。」








私の答えは決まった。









深呼吸。


大丈夫。


なんとかなる。


覚悟はもう決まった。






私は時計を見つめた。


秒針が規則正しく動いている。


頭がぼんやりする。


「止めろ!!秒針を見るな!」


シイの声がしている。


だけど、それも遠くに聞こえる。


シイが私の方へ走り出した。


そして私に手を伸ばす。


私もシイに手を伸ばした。


あと5センチ…


指が触れそうだ。


あと…1センチ…






時計が白い光を放つ。


体が引っ張られる感覚…


来た…


チャンスは1回…!






私の指と、シイの指は触れることなく離れていく。


吸い込まれる…時計の中に…







「洋子ーーー!」








シイの声がこだました。


ごめんね、でも…




すぐ終わるから。






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