花の咲く教室


「…ふぅ…。」



カチャと音をたて収録終了の合図がなる。



それと共に白菜はバイオリンを置いた。



どう…して……?



これは紛れもない、“彼”自身のココロ。



私の出した音色は悲しい音色。



なのに…。



彼は音色を包んでもなお明るい曲に仕立て上げた。



これはまさしく“彼”という立場からでも、性格でも、ない。



――――――ココロから…?




きっと彼は気がついたのだろう。



私があの日に作られた歌を聞いたこと…。



だから…こんなにも暖かく、




――――――優しいんだね…。



彼は何一つ変わってなどいない、あの頃のままの、純粋な、そして優しい心の持ち主だった。



ガラスのハートはアクリルのハートへ、アクリルのハートは、太陽のハートへ…。



壊れやすそうな彼の心は、
私の知らない間にこうして暖かい心へと変化したのだろう。



「…先輩?」



心配そうに彼がわたしを見る目は、あの頃と変わっていないじゃない…。



どうして、あたしはこの子が変わったと思いこんだの…?



この子はこの子のまま…。



< 73 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop