花咲文具店の秘密
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「……で?」




チラシから顔を上げた私に、千尋は「だーかーらー!」と声を張り上げて、紙面をバンバンと叩いた。




「最後まで読みなさいよ!ほらここ!」



「どこ?」



「ここ!ちゃんとメガネかける!」




指を指した先には、胡散臭そうな名前が記されていた。




……花咲文具店。





「はなさきぶんぐてん?」



「うん。すっっっごい評判らしいよ。恋を叶えてくれるんだって!」




興奮している千尋は、ここがファーストフード店だということも忘れているらしい。


声を張り上げ、チラシを再び突き出してきた。


私は人差し指を口に当て、騒ぐ友人を静かにさせ、ようやく口を挟んだ。




「てゆーか、こんなアヤシイ広告、どこで貰ってきたの」



「道子先輩」



「あー…」




たしかに、あの道子先輩が喜びそうな話題だ。


普段はサバサバしてる割に、妙なとこでロマンチックなのだあの人は。




「その文具店で売ってるビー玉を買って持ち歩いていると、好きな人と両想いになれるんだって」



「うそ臭!絶対そこの文具店の宣伝だって。ビー玉ごときで恋が叶ったら、安上がりもいいとこでしょ」




シェイクに手を伸ばしながらそう言う私を、千尋は恨めしそうな目で見つめる。




「でもさァ、皆もってるんだよ」



「はいはい。皆って何人くらい?」



「さ、3人」



「3人は皆とは言いません。却下」



「ちっ…違うの違うの!私が知ってる中では3人なの!ほんとはもっと沢山いるんだってば!」



「はあ…」



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