LittleSmoker
あの日

少年

夕焼けを浴びる海が窓から見える。HRが始まって学校から解放される時間。この時間が一日で1番好きな時間。海がテラテラ光って太陽が溶けだして空が飴色になっていくのをぼーっと見ているとここに来てよかったかもって思える。だって東京だったらこんな景色すらなくて毎日下向いて歩いてたかも知れない。

四ヶ月前ママとここに来て学校に入ってバイトして。私は相変わらず学校っていう所に合わない。キラキラしてるクラスの女の子達についていくエネルギーがなくて、部活に燃える程パワーもなくて、ぐれる才能もなくてここまでぼんやり生きてきた。

「じゃあ終わります。委員長?」
「キリーツ。レーイ。」
半分も立たない教室。 「ありがとうございま〜す。」
だらだらの挨拶。…帰れる。ガタガタと椅子が動いてやっとみんな立ち上がる。化粧ポーチのカチャカチャ言う音を背に教室をでる。

「モモちゃん、今日もバイト?」
廊下を歩いていると声をかけられた。
「うん。沢田さんは?」
「図書館。最近B組の子が来てくれないから。その代わりなの。」
「そっか、私も今度また本借りようかな。」
「あさって新しいの入ってくるよ。」
「本当??じゃああさって行けたら行くね。」
ドンっ!!!よろけて沢田さんにぶつかった。
「い…」
「いってーな。ぼーっとつったってんじゃねーよ。」
化粧の濃い茶髪の女の子が2、3人こっちを睨んでいる。
「…すいません。」
謝るとクスクス笑いながら通り過ぎていった。

慣れてるけど…こんなの…

「大丈夫?モモちゃん?」
「うん。ぶつかっちゃってごめんね。じゃあ私行かないと…バイトに遅れちゃうから…」
「うん。また明日ね。」

沢田さんは唯一仲良くなったクラスメイトで深入りするわけもなくお昼を一緒に食べるお弁当仲間だ。

坂を下り小学校を通り過ぎ古びた商店街を抜けると波の音が聞こえてくる。このまま突き進めば私とママのアパートがあって海水浴場が見える。夏はそれなりに人が来て賑わうこの町だけど、一旦シーズンオフになるとぱたんと静まり返る町。今年の3月まで東京のあの喧騒の中生活していたのが嘘みたいだ。こうやってガードレール沿いに海を見ているなんて…人生っていうのは…


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