芽衣の恋愛論
「ごめんな。何の話してたっけ?」
由宇君越しに話しかけてきた。
「いいよいいよ。女の子たちのとこ行きなよ。あたし、由宇君とお話してるから。」
「………。」
サトル君は黙ってしまった。
何か考えているみたい。
その時由宇君がトイレに行くと言って席を立った。
あたしとサトル君の間に妙な空間が出来た。
あたしはサトル君から目をそらしグラスのビールをゴクリと飲んだ。
そしたら目の前にいた人がビールを注いでくれた。
バンドのメンバーの人。
男の子にしては華奢な感じで印象は女性的かも。
「あ、ありがとうございます。」
あたしはペコッと軽くお辞儀した。
「サトルの知り合い?」
「あ、はい。」
「へぇ〜、可愛いね。なんて名前?俺は直樹、よろしく。」
直樹さんは右手を差し出した。
「あ、芽衣って言います。」
と言って手を出し握手しようとしたら、手を払いのけられた。
払いのけたのはサトル君だった。
「痛い、何するのよ!」
あたしは怒った。
「直樹、お前止めろよ。」
サトル君は直樹さんに怒っている。
「大丈夫?芽衣ちゃん。」
直樹さんはあたしの右手を撫でてくれた。
「サトル、酷いことするなよ。可哀想に。」
その様子に益々怒るサトル君。
「サトルは短気だよね〜、特に惚れた女のことになると余計怒りっぽいみたい。」
直樹さんが小声で教えてくれた。
「へぇ〜そうなんですか。」
あたしは答えた。
サトル君は直樹さんが何を話したか聞こえたらしく、口をパクパクさせている。