水色のエプロン
そう言って店長、今度は私にウインクを飛ばした。
「サモエド!?フレデリック!?犬!?」


 何はともあれ、私は来週から一人で一度も行ったことのない、トリミングサロンへ遠征に行くことになった。

 リリリリリリン・・・。

 うるさいほどの目覚まし時計の音に私は飛び起きた。
 今日は週の始まり月曜日。そう、今日から私は一人未知の世界へ飛び込むのだ。自信ない。
 私は朝一番で大きなため息を付いた。
 もうすぐ就職して一年経つというのに、私はいまだに見習いだった。どんな些細なことも、いつも店長に確認を貰っていた。この私が知らないお店に始めて行って切り盛りなんかが出来るのだろうか。
 店長のように、てきぱきとトリミングが出来るわけでもない。かといって時間をかけたからといって、店長のようにバランスのいいカッコいいカットができるわけでもない。私も犬は好きだけど、正直この仕事が私に向いているのかどうかすら、最近はわからなくなっていた。
 そんな時に限って、こんな高いハードル。私はちゃんと飛び越えることが出来るのだろうか。

 朝ごはんがいつもより重く感じた。毎日食べている食パンなのに、美味しいとも感じなかった。髪をとかしきつく束ねる、だけど一向にモチベーションは上がらなかった。早くオーナーさんの具合がよくなればいいのに。そうすれば何事もなくいつもの生活に戻ることが出来るのに・・・。
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