俺様彼氏に気をつけて!?

距離

佳奈に全てを打ち明けたのは一週間前のこと。

あれから私たちは今まで通り仲良く過ごしていた。

千晶とも一切進展は無し。

廊下で千晶の姿を見つけても声を掛けられないまま通り過ぎてしまう。

ついこの間までの関係が嘘だったと思えるほどだ。

まるで他人みたい。

千晶は本当に私のことなんて何とも思っていないと実感させられて辛かった。

もしかしたらもう忘れてるのかも……。

っいや、そうやってすぐ後ろ向きに考えるのが私の悪い癖！

私は両手で頬をパンッと叩いた。

「何してるの、ひな？」

「へ!?　あ、いや」

私の前の席の水樹が顔を覗き込んできた。

たしかにさっきの私の行動は不審だったかも。

「大丈夫？　最近顔色良くないよ。体壊してない？」

「だぁいじょうぶ！　ほら、こんなに元気！」

そう言って腕を振り回して見せる。

ほんとは最近食欲がなくて、頭痛もするんだけど水樹に心配掛けられない。

いつも頼ってばかりだから。

「ならいいけど……」

水樹はまだ心配そうにしている。

でも私が念を押してニコッと笑うと、諦めたように前に向き直った。

丁度良く始業のチャイムが鳴って、世界史の教師が入ってくる。

このマダムっぽいおばさん苦手なんだよなぁ～。

私は溜め息を吐いた。

「まっ！　篠岡さん、何ですか今の溜め息は！」

うわ、最悪……

「じゃあ篠岡さんにはここ読んでもらいましょうか」

そう言って教科書のページを指示してくる。

面倒くさっ、ほんっと最悪！

今日はツイてないな。

「……はい」

渋々立ち上がった。

その際、水樹がクスッと笑っていた。

はぁー……。