空に響け~僕達の生きた時~
―犠牲―

この世の中、犠牲無しで生きてはいけない。
いつも何か犠牲にしている。

だから僕は、
僕の生きる時間を犠牲にして
今を生きている。

この小さな命、
どこまでもつのだろう?

いつか叶う夢
いつも儚い現実と理想。

いつまでも夢の中でいられるなら
僕はこの世界をもっと
楽しめたのだろうか?

それは…誰にも分からない。
僕はまた、同じように目覚めた…。

「…。」

体を動かそうにも、
言うことがきかなかった。

だから目だけ動かして周りを見た。

あぁ…また病院か…。

せっかく帰れると思ったのに…

「羽夜斗…。目が覚めたか…。」

と、父親が

「羽夜斗…。よかった…。」

と、母親がそう言いながら涙ぐんでいた。

父親がそんな母親を慰める。

母親が少し落ちついたとこで
父親が医師を呼びに行った。

2、3分くらいしただろうか?

この前と同じ光景…。

父親と母親が入れ替わっただけだ。

「羽夜斗君…目が覚めてよかったよ。
今回は処置が早かったからよかった。
だけど…
これからはそうはいかないだろう。
なるべく無理をせずに
2人か3人で行動してくれるかい?
そうすれば、
君がまた倒れた時に他の子が君を助けてくれる。」

僕は小さく“コクン”と頷いた。

何で…

いや…考えるのはよそう…

今はただ眠りたい…

ただそれだけだ。

「と…ぅさ…ん…」

と、小さく呟く。

この声に反応した父親。

「どうした?何か欲しいものでもあるのか?」

と、僕に聞くが僕はただ眠りたかった。

「すこ…し…ね…むっ…て…いい?」

小さな声で、
いまにも消えそうな声で、
そう言う僕に父親は

「あぁ、そうだな。おやすみ、羽夜斗。」

と言う父親の声を聞き、

僕は眠りに堕ちていった。


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