私の最悪の幼馴染。
「・・・はぁ?」
「声が大きい」


麻子に再び口を押さえられた。


「ちょ、・・・どういうことよ」
「・・・どういうことって、アンタがこうだから、
私がこうやって一肌脱いでいるのよ」
「こ、こうだから、・・・って」
「鈍いから」


麻子はメロンパンと牛乳を手にしながら、足をばたばたさせた。


私たちは屋上のベンチに腰かけていた。


試験が近いせいか、それとも夏休みの間に破局したカップルが多いのか、


屋上は思った以上に空いていた。


「いやね、・・・古田君、どう考えても、貴女のこと好きだから」
「はぁ?何言ってるの。どう考えなくたって、私のこと好きなわけないじゃん」


麻子は大きくため息を吐いて、私の頬を右手の親指と人差し指でつねる。


「い、いひゃい、いひゃい!!」
「本当、勉強はできても、恋愛に関しては偏差値低いわね」


しかし、麻子はまったく、何をしたいのか。


「でもさ、いくら何でも、そんなことしなくたって」
「そんなことしなくても?それぐらいしないと全然駄目じゃない」


麻子はメロンパンをかじって、私に向かって指をさした。


「いい?これではっきりしたんだから」
「はっきりって。何がはっきりしたのか、私には全然はっきりしてないから」


ぶんぶん、と麻子が左右に勢いよく頭を振って、突然立ち上がった。


「で、どっちにするのよ」
「な、何がどっちにするって」
「きまってるじゃない、古田君か一之瀬君、どっちにするのか、てこと」
「・・・はぁぁ??」


私の大声が、突き抜けるような秋空に響き渡った。


「言ったでしょ。昨日、アンタが購買部から帰った後の一之瀬君の態度、
それに、昨日の放課後、古田君を呼び出して、2人の登校ルートを教えたら、
あなた達のところに現われたこと、
それに加え、今日の古田君の言動と、一之瀬君の態度。」


麻子は片手に拳を作って、私に迫ってきた。


「全部ひっくるめて、2人はアンタが好き、てこと」
「絶対あり得ない!!!」


周囲のカップルの注目を集めていることに気がつかず、


私たちは大声で叫びあうように、互いに言葉を投げ合った。



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