傷跡

『俺さ……別に隠してたわけじゃないけど…福祉施設に入ってたんだ。多分小学校三年の終わり頃ぐらいからだったかな』




福祉施設…?


親がいない子供や事情があって預けられる子供達がたくさん集まって生活するところだったよね?




『俺の親父はすごい人だったんだ。仕事人間で、真面目で。会社を経営してたし周りからもすげー尊敬されてて。そんな親父を俺は小さい頃からずっとカッコイイと思ってた』




会社を経営していたそんなすごいお父さんがいたのに…なんで光輝は施設なんかにいたんだろう?




初めて聞く光輝の親の話。

あたしはずっと興味があったはずなのに…


話をする光輝の顔があまりにも切ない、苦しそうな表情をするから。


だから…

これ以上聞いていいのかなって。

そんな疑問すら抱いてしまう。




『だからさ、周りの友達みたいにキャッチボールとかできなくも、休みの日に遊園地に行けなくても俺は平気だった。周りから常に必要とされてる親父は…俺にとって憧れっていうか目標みたいな感じになってたから』




『そうなんだ…』



相槌をうちながら、あたしはそう呟いた。


なんか…何て言えばいいのか…
分からなかったから。




『オーストラリアに行った話はしたことあっただろ?あれ、小学校三年の夏に行ったんだ。でも…その間にこっちでは色んなことが起きてて…。会社の人間でさ、親父が全てを任せて信頼していた奴が…金を横領して逃げたんだ。まぁそれで済めば良かったんだけど…他にも色んなことしてたみたいで…不渡りまで出して。一瞬だったよ会社が潰れるまでは』




横領?


会社が…倒産したの?



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