世界を敵にまわしても
「やっぱりダメだよね。それ、一応預かるから。放課後取りに来てくれる?」
冗談じゃない!
こんな本借りてるなんてバレたくないし、そもそも適当に選んだ本なのに。
「あ、いえ。これ机の中に入ってたんですけど、返しておきます。授業中にすみませんでした」
嘘をついて、でも反省の色を濃く出した。つもりだった。
これで許されるだろうと思ったのに。
「そうなの? じゃあそれは俺が返しておくから……放課後の雑用手伝ってくれるかな」
想像しなかった台詞に、顔が引きつる。
「……きょ、今日ですか?」
苦笑いして尋ねると、朝霧先生は何の偽りもない笑顔を返してきた。
「うん。誰か手伝ってくれないかと思ってたから、ちょうど良かった」
笑顔が眩しいって、こういうことを言うんだと思う。
Aランクの女子の視線を感じながら、あたしは内心で最悪だと思いながら雑用を了承した。
「あ、もうチャイム鳴るね。じゃあ今日はもう終わり! 日直ー」
……え?
号令を促された日直が「きりーつ」と締まりのない声で言うと、ガタガタと席を立つ音がして、あたしが声を発する暇もなく授業は終わってしまった。
朝霧先生があたしの教科書ごと、本と楽譜を持っていったまま。