モテ男と地味子の初恋物語
午後の授業が始まっても圭介は戻って来なかった。

圭介の奴、何やってんだ?
便所か?


俺が中庭から戻る時、紬は膝を抱えて俯いていた。圭介は、そんな紬に寄り添うように座ってた。

その光景を頭に思い描くと、やり切れないような、いらつくような、哀しいような、何て言っていいのか分からないが、嫌な気持ちになった。

ひょっとして、あいつらはまだあそこに、あのままで…?

「ああもう、我慢できねえ!」

俺はそう叫んで立ち上がっていた。

「どうした、桂木? 何が我慢できないって?」

「あ、先生。と、トイレです」

周りの奴らがドッと笑った。
カッコ悪いけど、構うもんか。

「そういう事か。いいぞ、行って来い」

「すんません」と言って俺は教室を飛び出した。
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