素直に
第3章
    3
「綺麗に片付いてるね」


「ええ。掃除は欠かさないし、整理整頓もちゃんとしてるから」


 部屋に入ってからすぐに、僕は慧子が部屋を綺麗にしていることが分かった。


 彼女が履いていたヒールを脱ぎ、窓際まで歩いていって、窓を開け放つ。


 そして新鮮な空気を入れた。


 田舎の街で、学生だけがやたらと多いので、道路に排気ガスはあまりない。


 まあ、バイクを乗り回している学生も大勢いたのだが……。


 僕が、


「夕食作るけど、何がいい?」


 と訊く。


 食べ物の好き嫌いもあると思って、だ。


 さすがに三年ほど一緒にいても、お互い食べるものに関して、好き嫌いまでは分からないのが事実だった。
< 12 / 204 >

この作品をシェア

pagetop