素直に
最終章
     FIN
 二〇一七年四月、僕と慧子は揃って、秋光大文学部ドイツ語学科の助手になった。


 上原先生の研究のお手伝いをさせてもらうことで、互いに学究(がっきゅう)を高めることが出来る。


 僕たちは毎日講義があるたびに、学生相手に作ったレジュメを使い、事実上上原先生の片腕となっていた。


 ちょうど学内にある木々から桜の花が落ちて、新緑が萌えている。


 僕も慧子も互いのマンションを行き来して、ドイツ語の勉強を重ねながら、更に高いレベルまで来ていた。


 私立大学は定年となる年齢が高いから、上原先生もまだ現役で欠かさず大学に来ているのだし、僕たちはお手伝いをすることで、ドイツ語やドイツ関連のことをもっと詳しく知るようになる。


 実は僕たちが助手になると同時に、准教授だった佳久子が他大学に籍を移した。


 僕は心の奥底で思っている。


 火種が一つ消えたなと。


 そしてそれから僕も慧子も秋光大の研究室に入り浸り、研究生活を続けた。

< 198 / 204 >

この作品をシェア

pagetop