素直に
第12章
     12
「まだ学園祭には早いね」


「ええ。でも準備はあってると思うわ」


「まあ、どうせ俺たちは行かないからな」


「そうよ。関係ないんだし」


 僕と慧子は学内のカフェでコーヒーを飲みながら、セットとして付いていたケーキを食べる。


 彼女は苺のショートケーキを、一方の僕はチョコレートケーキを頼んだ。


 秋の深まりを感じ取りつつ、互いにケーキを食べ、コーヒーを飲みながら、僕たちは贅沢な時間を味わう。


 ついさっきまでカフェは賑わっていたが、時間帯が午後四時過ぎになったので、店内は人が減り始めていた。


 これから先は、学食の方が込み出すだろう。


 僕たちがケーキを食べ終わると、ウエイターがやってきて、


「失礼します。お皿の方、お下げいたします」
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