忘れない、温もりを

魔法使い

翌日、
その日ももちろん夏休みで
あたしに時間の制限なんてなかった。

仁に出会った昨日が、
遠い昔のように

夢であったかのように感じたが

彼もあたしも


確かに存在していた。



昨晩
夢見心地のまま
ベッドに入ったあたしは

一息ついたあとか
つく前か
いつの間にか眠りに就いていた。



思い切り太陽に抱かれた日は
とても寝つきがよくなるが

そんな風に
昨晩も
程よい疲れのなか

あたしはベッドに身を沈めたんだ。



今朝はとても目覚めがよかった

一瞬、
仁の顔が目覚めと同時に過り
あれは夢じゃないと
自分に言いきかせた。

でも、その必要もなかったかもしれない。


あたしの腕も
腰も
手も

唇も

彼を あたしは全身で記憶していたから。



彼の呼び掛ける声に
反応して
振り返ったあの瞬間

あたしと仁は

同じ空気の中
同じ場所に立ち


そこから手を取り合い
歩んだ。





例えこの先、
あたしが仁を失うようなことがあっても

あたしの細胞は


彼を永遠に
そこに留まらせるだろう。


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