ストロベリーフィールド
第1章:秘密
高校三年の春
私はいつもと変らない日々が、始まるものだと思っていた。


始業式の朝、家を出ると、雲一つない青空の下で、大きく手を広げ、伸びをした。

「彩!」

後ろから大きな声がしたかと思うと、目の前に自転車が止まった。

「早く乗れ!」

和希は私を急かした。

「珍しいね、和希が後ろに乗せてくれるなんて」

自転車の後ろに乗ると、和希の顔を覗き込む様に身を乗り出し言った。

「今さら乗っても、絶対間に合わねぇけどな」

和希は勢いよくペダルを踏み込んだ。


和希とは小学生の頃から一緒だった。
いわゆる幼馴染みってやつだ。
何も知らない子供の頃から一緒にいるからか、女好きの和希が私には手を出さない。
そんな和希との関係が、心地よかったりする。


「やっぱりダメだったね」

校舎に入ると、誰もいない教室で言った。
和希は机に鞄を置き、ベランダに出た。
私も同じ様にベランダに出て、壁にもたれるように座り込んだ。

「初日からってヤバいよね」

「大丈夫だろ。俺なんてしょっちゅうだから」

和希は私の頭にポンと手を置いた。

「何やってんの、お前ら」

ふと、上から聞こえる声に顔を上げると、教室の窓から翔が身を乗り出していた。

「翔も遅刻かよ」

「悪いか」

翔はほほ笑みながら座った。

翔は和希の友達で、何度か話したことがあるくらいで、顔見知り程度。


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