ストロベリーフィールド
「はい」

玄関の扉を開けた翔は驚いていた。



啓太との電話を切った後、私は来た道を引き返し、気付いた時には翔の家の前に立ち、呼び鈴を鳴らしていた。

「どうした?」

翔のたった一言に、急に涙が溢れてきた。

「なに泣いてんだよ。デートじゃなかったのかよ」

「啓太と…別れた」

溢れ出す涙に、声はうわづっていた。

「とりあえず、中に入れ」

翔は立ち尽くす私の手を引き、部屋へとあげた。

「ずっと楽しみにしてたのに…ドタキャンされて…」

その時、泣きながら話す私を翔は抱きしめた。

子供をあやすように頭に手を置き、そっと包み込んだ手が温かくて、ずっとこうしていたいと思った。




「落ち着いたか?」

しばらくすると、翔は私の顔を覗きこんだ。

「うん。…ありがとう」

「よし。じゃあ、花火見に行くか!せっかく浴衣まで着てんだし」

翔の笑顔に励まされ、二人で花火大会へ行った。



「花火はやっぱりいいな」

夜空を見上げ、翔は言った。

「興味ないんじゃなかったの?」

「一人で見たって、面白くもなんともねーだろ。 大切な人と見るからいいんだよ」

「大切な人?」

「あぁ。彩は大切な友達だからな」

夜空を見上げていた翔が突然、私の目を見つめ、鼓動が早まった。

それを隠すように翔に笑顔を向けた。

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