ストロベリーフィールド
バスに乗り、来た道を引き返した。


あれから翔は何も言わず、じっと窓の外を眺めている。


私も同じように、一面に広がる景色に目をやっていた。




「これだったよな?」

映画館に着くと、翔は一枚のポスターを指差した。

それは私が見たいと言った映画。

だけど翔はあの時、恋愛ものに興味はないと、私と
<きっとあなたも、大切な人に会いたくなる>
という謳い文句をバカにしていた。


なのにどうして?
と聞くのが、何故だか怖かった。



中に入ると、カップルばかりだった。

誰もが幸せそうに、顔を寄せ合い微笑んでいた。

私たちも隣同士に座った。

少し手を伸ばせば触れられる距離にいる。

それだけで緊張していた。



映画が終盤に差し掛かった時には
館内のあちこちで、涙を拭う姿が見えていた。

私も手にしたハンカチで何度も涙を拭いていた。


その時、ふと目に入った翔の横顔にも
一筋の涙が流れていた。



その涙があまりに綺麗で、思わず見とれていた。


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