天使と野獣
京介が吉岡の息子を擁護するような言葉を出した。
知っていたのか。
誰にも関心を示さず無愛想な京介が…
その栄の様子で、心の内を感じた京介は、
照れくさそうな笑みを浮かべて父を見ている。
「別に知り合いって関係ではなかったが…
昨日、あいつは俺の傍に落ちて来た。
俺に無念を晴らして欲しい、って顔をしていた。」
と、京介は昨日からの事を栄に全て話した。
おまけに今掴んだ情報まで包み隠さず話している。
「そうだったのか。じゃあ殺された可能性の方が大きいのだな。」
「そうだよ。警察もその方向で動いている。
まだ何もはっきりした証拠が無いから公表しないだけだ。
吉岡の親父さんたちには、
息子はサッカーの花形だったから女にもてたが、
真面目な学生だった、と言ってやってくれ。
俺が絶対に犯人を捕まえてやる。」
「そうか、わかった。
しかし京介、そういう違法なドラッグが絡んでいるとすれば
相手は危険な奴らだぞ。
わしとお前の約束を忘れるなよ。」
「分っているよ。だから今だって
闘って負けるとは思わなかったけど逃げて来た。
それにそういう奴らなら一網打尽にしなければ意味が無いだろ。
もっと証拠固めをしてからだよ。
まずは明日あの二人から話を聴く。
初めはあいつらが… と思ったけど、
余りにもひ弱だった。
吉岡の顔を殴るようなことは出来ないと見た。
と言うことはまだ学校に誰かがいると言う事になる。
学校など全く興味が無かったけど、
まあ卒業の置き土産に一仕事する。そう決めた。」
「そうか。ただし何度も言うが、
身の危険を感じたら警察に話すのだぞ。
警察だって馬鹿じゃあない。
お前と同じ路線で追っているのかも知れないから、
双方の意見を出し合えば強力なものになるなずだ。」
「そうだね。明日、あいつらからの情報次第でそうする。」