ボクがキミをスキな理由【短編集】

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アンナを初めて見たあの日から
一週間後



俺は海辺にあるジャズバー
Club:espressibo
(グラブ: エスプレッシーヴォ)
に来ていた。




今思ったら、あの時の俺は
随分マセた
ガキやったと思う


ジャズのセクシーさも
酒の甘さもわからんくせに
そんな盛り場に顔を出したんやからな。



夜のとばりの中
俺はチャリンコを飛ばして
アンナの待つエスプレッシーヴォに向かう。



クラブに近づくに連れて
大きくなる歌声と
鳴り響くピアノの音



はやる気持ちを押さえながら
エスプレッシーヴォの扉を開けると
中はランプと白熱灯の照明に照らされた、
落ち着いた雰囲気のフロアーが現れる。




むせかえるほどのタバコのフレーバーに
甘くて芳醇なワインの香り




――う、わ……。

俺めっちゃ場違いやん……!!




目の前に広がるのは
イイオトコとイイオンナの集う
大人の社交場




完全に場違いなガキな俺が
入り口付近でオロオロしていると



「坊や、どうしたね。」




シルバーグレイの髪をした
優しそうなおじいさんに
声をかけられた。



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