ナガレボシ
12月の近所の交差点。
なぜかいつもと違って
慌ただしく感じられた。
「師走」。
やっぱりみんな
忙しいんだね。
あたしもだけど。
あたしが住むマンション
の周辺には大きな高速道
路が一本走っている。
だからいつも夜遅くまで
騒がしかった。
交通事故なんかも
12月は特に多くて、
パトカ-や救急車のサイ
レンは毎日のようになり
響いていた。
「あんたもひと事じゃない
んだからね。
気をつけなさいよ。」
家を出る時に母に言われ
た事を思い出していた。
だからいつもは平気で信
号無視する小さな交差点
も、じれったくてイライラ
しながらその日はちゃん
と守った。
信号が青にかわると同時
に自転車をこぎだし、
いつものファミレスの
横の路地に入った
その時だった。
真っ暗な路地の外灯の
下に、小さな黒猫がうず
くまっているのに気がついた。
どうやら死んでいるら
しい。
あたしはドキッとして
思わずブレ-キを
にぎった。
「・・・かわいそうに。
きっとお母さんとはぐれ
て寒くて死んじゃったん
だ・・・。かわいそうに。」
あたしはどうする事も
できず、無意識のうちに
塾で食べるために持って
きていたビスケットをその
猫の隣に置いてあげた。
「時間がないから行くね。」
そして静かに手を合わせ
て再び塾へ向かった。