ナガレボシ



あたし達は目をあわせた。




「あんたさぁ、
来る時ここに猫
死んでたの知ってる??」



沢本くんが
少し無愛想に尋ねた。




「うん。」




「何でいなくなったの??」





そんなこと
あたしに聞いても
わかんないよ。




「わかんない。
でも、もしかしたら生きてたのかも。あたし、横にビスケット置いてあげたから、それ食べて元気になったのかも。」








「んなわけないじゃん。
俺、何回もさすったりゆすったりしたけど起きなかったから、塾終わってから家に連れて帰って、じいちゃんとこのお寺で焼いてもらおうと思ってたんだ。」





「でも・・・
いないよ???」





あたしはすごく
恐くなった。

そうだよね。
確かに死んでたよね。

じゃあ
何でいなくなったの???


「怖い・・・
何か怖いよ・・・」


急に寒さが増してきて、
体中が震えてきた。


「大丈夫??
すげぇ顔色悪い。」


沢本くんがあたしの顔を
のぞきこんで言った。


「家、どこ??」


「ここから
15分くらい・・・。」



「送るよ。」


え??

あたしを??

家まで送ってくれんの??


いいよ・・・。
何か悪い・・・。


でも、その時のあたしは
一人で帰れそうもないほど脅えていた。

ごめん沢本くん。
お願いします。

心の中で
そうつぶやいた。


「沢本くんは
家どこなの???」


「俺??
俺も15分くらいかな。
てか俺の名前知ってんだ。」


「あ、うん。さっき亜紀枝から聞いた。」


「亜紀枝・・・って、
あの背が高い子???」


「そうそう。」


「そっかぁ。
あんた、何て名前なの??」


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