勿忘草


「今日は本当にありがとうございました。葛城先生」


俺達は診察室から出て、病院の庭に来ていた。


空は相変わらず雲一つない青空。



太陽は容赦ない日差しを俺達にあてた。


空木は車を取りに行っている為、その間ここで待っている。



「いえいえ。また何かあったらいってくれ。いつでも協力するよ」


葛城先生はそう言って俺にくしゃりと笑った。


「すごーい!」


子供達の歓声が聞こえる。

声の方を見ればシオンが病院の子供達と楽しそうに遊んでいた。


木陰で花の冠を作っているようだ。


そんな彼女を見て、葛城先生は言った。


「彼女のような重度の記憶障害の方には本来記憶を取り戻す為の手伝い…リハビリをするんだが、彼女には必要無いだろう」


葛城先生は自信ありげに目を細めて笑う。


「きっと彼女は、自分で取り戻せる」



そういう葛城先生に俺も同意した。


「私もそう思います」



「できた!!はい、どうぞ」

「わぁ~」



シオンは優しく微笑みながら白詰草の冠を、小さな女の子の頭の上にのせる。

「花奈ちゃんいーなぁ」




そんな彼女達を微笑まし気に眺めながら、そう返した。



「けれど手助けが必要だ。総護君、彼女にいろんな物を見せて、やらせてあげてくれ。きっと彼女の思い出が見つかる。」



「わかりました」


「先生ー見てー!」

するとシオンと女の子がこちらにパタパタと走ってきた。


女の子は葛城先生に抱き付く。

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