勿忘草
「榊君?」
茉莉花は俺に反応が無かった事を不審に思ったのか、のぞき込むように俺を見てきた。
その表情は、先ほどから自信ありげな顔は変わらないものの、
どこか焦っている様な…少し苛立っているようにも見えた。
「ん…あぁ」
「それで…?」
俺はいつまで縛られているんだ。
そろそろ前に進まなきゃいけない。
これは良い機会かもしれない。
‐付き合っちゃえば?‐
陽介に言われた言葉を思い出す。
そう…このまま誰とも付き合わなかったら
きっと周りの奴らはまだ俺が引きずっているんじゃないかと心配する。
もうあの頃には戻れないんだ。
俺は今を生きなきゃいけない。
自分の為にも、
周りの奴等の為にも…
俺はすぐそこにある柏木の髪に手を伸ばし、そっと触れる。
いきなり髪の毛を触られ驚いたのか、一度ビクリと体を揺らす茉莉花。
そして手をするりと髪から頬に伝わせ、今度は頬からその手を唇に滑らせ、親指でそっと唇をなぞる。
するとその唇はゆっくりと甲を描き、勝利を確信したかのように艶やかに微笑んだ。
「付き合うか…茉莉花。」