~天へ送る風~


「これは……」
 
 彼女は言いながら、抗いがたい何かに身体を引っ張られるのを感じた。

 じり、と少しずつ波紋を侵し、乱してゆく。そうたいして強い呪いではないが、いかに小結界でも破られれば施した術者へも相応の反動が出る。

 結界はやや過剰に反応している。
 アレキサンドラ、リッキー……彼女の何かに。


「だめ、だめよ! 止まってちょうだい!」
 結界の中からリリアが飛び出してきた。

 待っていましたと青い光線が放たれる。
 悲鳴がリリアの口から発せられた。


 壁に透明な波紋が広がり、その中にリリアは叩き伏せられたのだ。
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