エージェント
赤羽組が立ち去った後の本城の屋敷は見るに耐えないものだった。
ヒステリックに泣きわめく女と、戦意喪失している組長。
訳もわからずただ立ち尽くす若頭。
そんな状況のせいで周りにいる幹部もどうしたらいいかわからず、外にいる組員は現状すらわかってない。
ここまでこの家がある意味悲惨になるなんて誰一人として思わなかっただろう。
しかもたった一人の女の手によって。
「はぁ…」
ーーー面倒だな。
家の中に戻ってきた朔羅は、この状態を一通り見ると、近くにいる幹部に声をかける。
「朔羅の坊ちゃん…」
「とりあえず外にいる奴等に赤羽は追うなと伝えろ。襲撃しようとしてる奴等には撤退命令。負傷者いるようだったら手当てしてやれ」
「わかりました」
なんで俺が、と心の中では思いながらも、近くにいる幹部たちを動かしていく。
自身の両親や兄が動こうとしないので、結局朔羅が全て手を打つ。
「どうせ親父も今は普通の精神状態じゃないだろ。明日以降に集まるように伝えて、今日は片付け終わったら全員解散させてやれ」
「はいっ」
朔羅の指示が的確で、その命令にみんなが従う。
「おい、兄貴。さっさと動け」
「あ、ああ…」
ーーめんどくせぇ…。