君の影をみてる〜幼なじみの恋〜
「恩田〜、ちょっと来い!」

練習中、私は本多先生に呼ばれた。

「お前の走りは、北村と瓜二つだなぁ。」

「…そう…ですか?」

「ま、お前の場合、期間限定なものだから、今、ヘンに直して、タイムにヒビいてもナンだしなぁ。」

「はぁ。」

「北村は最近、素直に意見を聞けるようになって、
動きにムダが無くなってきたから、
目でコピーできるなら、参考にしてみろ。」

「…。」

「アハハ、青春してるって感じだなー」

「は?」

「アドバイスしてくれたって?」

「なんのこと?」

「幅跳びのことだよ。俺が北村に言った事と、同じ事を言った奴が居るって…おまえさんだろ?」

「えー、アドバイスってものじゃぁないけどぉ。」

「お前の言うことには耳をかすんだよな。アイツ」

「そんな…」

「陸上を始めたのだって、そうだったもんな!」

「…」

「ま、自分の事も手を抜くなよ!
好きな奴を見てるのが、練習になるなんて、お手軽過ぎだけどなー。」

「な、何言ってんの!」

「…」

「何?」

「おまえも、陸上に来たらどうだ?時間があれば、長距離がイケそうなんだがなぁ」

「ムリ!」


それからの数日間、指導を受けた私は、努力の末、
念願だった、女子4継の、第3走者の選手に選ばれたのだった。
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