finder

「手加減、しなくていいから」

絵美ちゃんはそう言ったけど、わたしはバスケ部だし、絵美ちゃんはバスケどころか運動部ですらない。

ゆっくりドリブルを始める。

間合いをはかる。

絵美ちゃんも一歩も動かない。

ゴールに向かって足を踏み出す―…



一瞬のうちにボールはわたしの手のなかからなくなっていた。

隣でドリブルの音が聞こえる。

「へたくそ」

絵美ちゃんはスリーポイントシュートをきめた。

絵美ちゃんの手を離れたボールはスウッとのびて、ゴールに吸い込まれた。

あまりに綺麗で思わず見とれしまうくらいにうまかった。

スポッとゴールのネットをゆらしたボールは地面に落ちて、小さく何度か跳ねていたけど、そのうちに転がって、絵美ちゃんの前で止まった。

< 13 / 75 >

この作品をシェア

pagetop