くじら


















少しゆっくりしたところで 母様は席を外された




部屋にまた織人さんと二人になった







「君が、二階堂のお客だったんだな。」



「…はい、えと…」



椅子からすっとおりて窓際に移動した




「織人でも、綾部様でもどっちでも…。」




「―織人様」




あぁと返事だけはしてくれた





「……君は日本人だよね」



「はい…。」






「……英語は話せないだろ、日本人だから。」





日本人だから…
いやみだ…



「…話せないわ。でも仕方ないじゃない」




「……」



織人さんは椅子に座った


「母国語じゃなければ話せなくて当たり前なんだね、日本人は。お気楽でいいね」




「なによ、帽子拾ってくれたから黙ってたのに!お気楽で悪かったわね…、」






多分彼の挑発にまんまとのったんだと後で思った




英語を學び始めたのは日本人を馬鹿にされたからだ


悔しかったからだ
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